アイスランドのロイガヴェーグル(Laugavegur)でのトレッキングの記録(後半)です。前半はこちら、ロイガヴェーグルについてはこちらを参照ください。
Day 3(2022年7月13日) 快晴
アルフタヴァトン(Álftavatn, 標高548m)→ ハヴァンギル(Hvanngil, 同598m), 3.9km ▲102m ▼53m, 渡渉1回
03:00
7時間爆睡して日の出を拝もうと目を覚ましてテントを出てみましたが、山に囲まれ日の出まではまだ時間がかかりそうです。
05:30
そう思って二度寝すると、次に目を覚ましたときはすでに5時過ぎ。すっかり陽が上がっていました。今日はわたしの誕生日なので朝食は赤飯に五目おにぎりをつけました。
これまで、いい歳をして誕生日なんて。。。という考えだったのですが、先月、地元鎌倉が舞台の「最後から二番目の恋」(再)で長倉和平(中井貴一)が小泉今日子演じる46歳の吉野千明の誕生日に送った言葉で考えを改めました。還暦も近いのですが、単純なもんです。
以下、トレッキングに関係ないのですが、長倉和平の言葉の引用:
「誕生日にはお祝いすることが2つあるんです。1つはもちろん、あなたがこの世に生まれてきたこと、もう1つは、今あなたが元気で生きていること。だから、もうそんな誕生日やるような、めでたい歳じゃないんですとか、誕生日がくるのが嫌なんですって人がいますけど、あれ絶対におかしいんです。むしろ逆で、歳をとればとるほど、めでたいことなんです。素晴らしいことなんです。23歳の誕生日より、46歳の誕生日の方が倍、いやそれ以上に素晴らしいことで、めでたいことだって思いません?」
07:45
閑話休題。3日目は晴天に恵まれました。素晴らしい誕生プレゼントに素直に感謝です。まずはハヴァンギルに向けて、アルフタヴァトンを出発。
20分ほど歩くと、いきなり渡渉ポイント。躊躇しても始まらないので、さっさと覚悟して渡るしかありません。
これぞ完全青空!
雪渓を横切るコースのすぐそばに大きな穴。トレッキングポールを刺して確認しながら進みます。
晴天ですが、氷河から吹いてくる風はとても冷たく汗をかくことはありません。
あっという間にハヴァンギルのキャンプサイトがみえてきました。快晴だと、時間が経つのも早く感じてしまいます。
いずれのキャンプサイトでもその近くの川には橋がかけられていました。
09:10
ハヴァンギルに到着。こじんまりとしたキャンプサイトです。個人的にはアルフタヴァトンのキャンプサイトの方が広々としていて好きですが、逆に風を遮るものがなく、強風時はハヴァンギルでテント泊する方がいいのかもしれません。ただ、狭そうなので早めに到着して場所を確保するのがベターかと。
09:15
ハヴァンギル(Hvanngil, 標高598m)→ エムストゥール(Emstrur, 同553m), 11.9km ▲158m ▼202m, 渡渉1回
↓の山を登らなければならないのかと思いきや、幸いにも?コースは違っていました。
またまた景色が変わり、今度は噴石がゴロゴロするコースになります。
今回、もっとも幅が広かった渡渉ポイント。膝上までありそうなので、短パンに履き替え、流れの弱そうなところ(少しでも川幅の広いところ)を探して渡ります。
よく防災のテレビ番組などでみますが、膝上まで水がくるとなかなか前に進めないことを身をもって知ることができました。渡渉のためにもトレッキングポールがあるとよいでしょう。
火山灰の上に噴石が転がる道が延々と続きます。噴石も新しいものと旧いものがあるようなので、何度も噴火しているのでしょう。
遠くに見えていた氷河もかなり近づいてきました。
エムストゥールまであと5.7キロ。キャンプサイト間の距離は図上測量とだいたい同じなのですが、途中の表示距離は地図と微妙に違うことがあります。
ここは何とか飛び石の上を歩くことができましたが、あと数センチ水量が多ければ靴を脱がなければならないはず。
不思議なことに噴石がほとんど姿を消し、火山灰だけの道になります。
天気が良くて先の見通しが効きすぎるのも善し悪し。いつになったらゴールはみえるのでしょうか?
小さな川の流れでも、時間が小川を渓谷に作り替えます。
ようやくエムストゥールのキャンプサイトがみえてきました。もう少しです。
13:10
最後の宿泊地エムストゥールに到着。ここでもビールを購入。「10本どうだ?」と言われましたが、とりあえず1本だけ。後で、追加で2本買いに行ったら「やっぱり10本だっただろう?」と言われて大笑い。
このキャンプサイトへは2番乗りでしたが、みるみるテントが増えていきます。水場までは遠いので、小川の水を汲んで食事やコーヒーに使いました。水着になって冷たい川につかる人々もいましたが、熱湯風呂よりも酷なような。
明日はいよいよソゥルスメルク/Þórsmörk(ゴール)です。夕方になると、雲が少し厚くなり始めたのが気掛かりです。
Day 4(7月14日) 曇りのち晴れ
エムストゥール(Emstrur, 標高553m)→ ソゥルスメルク(Þórsmörk, 同286m), 15.8km ▲215m ▼483m, 渡渉1回
05:00
最終日も5時起床。昨晩22時半頃、わたしたちのテントのすぐ横に設営を始めるグループがいました。朝みてみると、小川ギリギリのところに立ててあります。わたしたちがもう少し隅っこに設営してあげていれば。。。と申し訳なく思ったのですが、ここまで混み合うとは予想だにしませんでした。↓以外のキャンプサイトにも所狭しとテントが並んでいました。
08:35
雲行きが怪しいので、雨支度をしてエムストゥールを出発。最終日は荒涼とした雰囲気で始まりました。
橋は壊れていたものの何とか渡ることができます。
太古の地球を思わせる景色の連続。これまで知っている美しさとは異次元のもの、美しさの概念が覆されます。
ロイガヴェーグルで唯一、鎖場がある渓谷。
ひたすら歩くしかありません。
ロイガヴェーグルで初めてみる滝(おそらく)。
尾根でドローンを飛ばそうとしているグループがいましたが、おそらくこの風では無理でしょう。
地層がはっきりとみてとれる山肌。その昔は海底だったのかもしれません。
よくここで止まったなと思わせる石々。ロイガヴェーグルはスケールが違いすぎて、こうした大きな石をみても普通サイズの感覚になってしまうから不思議。
シンボリックな自然造形のないロイガヴェーグルですが、珍しく個性的な山々がみえました。
Vの字ではなく、途中の幅が広いつぼ型の渓谷。どうしてこうした形になったのか不思議です。
標高400mあたりになってようやく低木がみられるようになります。アイスランドではこのあたりが森林限界なのかもしれません。
彼方にみえるのは湖? ソゥルスメルクはそこまでは遠くないはずですが、ゴールに近づく喜びとロイガヴェーグルのトレッキングが終わる悲しみが交錯し始めます。
コース終盤、もっとも幅の広い川。が、幸いにも水量が少なかったので、水の流れる幅はそれほどでもありません。しかし、流れの早いところもあり、疲れた足には堪えます。
初日から一緒だった女性4人組にここでまた再会。それぞれ個性が違う面々でしたが、隊長(とわたしたちが思いこんでいる人)はとても愛嬌があり、キュートなグループです。渡渉を前に隊長はスパッとタイツを脱ぐと、ピンク色の可愛いTバック一丁に⁉ 嫌らしさはまったくなく、むしろ清々しい感じ。さすがにカメラを向けるわけにはいきませんでしたが。。。
ロイガヴェーグルとも間もなくお別れ。名残惜しむように来た道を振り返ります。
13:45
ついにソゥルスメルクに到着。ビールで乾杯です。
元々は18時のバスを予約していましたが、14時半のバスに乗れたので、早めにレイキャーヴィークに戻ることができました。
世界で一番美しいと聞いてチャレンジしたロイガベーグル。地球上完にはこういう類の美しさもあるのかという、予想だにしなかった経験を妻と一緒にすることができました。
ロイガヴェーグルを歩くためにトレッキングを始めてもいいのではないかと思ったくらいです。
(完)