Kamakura-An’s diary

鎌倉で海と戯れながら、時折、トレッキングにも

ロイガヴェーグル(アイスランド) 2022年7月

コロナというものが世の中に現れる少し前、アイスランドに世界で一番美しいトレッキングコースがあるということを耳にしました。

調べてみると、ロイガヴェーグル(Laugavegur)という、全長55kmを3泊4日で歩くコース(標準パターン)のようです。

 

いつもであれば、行きたい=行く、となるのですが、今回は少しばかり躊躇、一抹の不安がありました。

アイスランドは天候が目まぐるしく変わり、傘が用をなさないほど風も強い土地柄。当然、標高の高いロイガヴェーグルのコンディションはさらに厳しくなります。

そもそも北緯64度(東京は35度、札幌が43度)にあるので、日本のトレッキング感覚でとらえらるわけにはいきません。

そんななか、テント・シュラフ・食料・防寒具などを担いで歩き切れるだろうか、という点に不安を覚えたのです。なにせ還暦もカウントダウンに入っている身ですし、妻も一緒です。

それまでの海外トレッキングは麓の小さなホテルをベースにして、ワンディ・トレッキングを繰り返すパターンでした。

しかし、「世界一美しい」と称されるコースを歩いてみたいという気持ちを抑えることはできず、海外渡航解禁を待ってアイスランドへ。正確には解禁を期待して前年の秋にはフライトを予約。

いつものトレッキング旅行であれば、日本を発つ日が近づくにつれテンションが上がってくるのですが、一抹の不安からかそうはなりません。

天気予報をみるとむしろ不安は大きくなり、レイキャビクに入ってからの寒さがそれに追い討ちをかけます。

とはいえ、妻の手前、心配をあまり口にすることはできず、不安を抱えたままロイガヴェーグルに向かいました。

果たして、幸いにも、案ずるより産むが易しというか、地球上にはこういう類の美しさもあるのかという、予想だにしなかった経験を妻と一緒にすることができました。

ロイガヴェーグルを歩くためにトレッキングを始めてもいいのではないかと思ったくらいです。

Day1 ランドマンナロイガル→フラブティンヌスケル

Day2 フラブティンヌスケル→アルフタヴァトン

Day3 アルフタヴァトン→エムストゥール

Day4 エムストゥール→ソゥルスメルク

ロイガヴェーグルとは

ロイガヴェーグルはアイスランドの南西に位置し、ランドマンナロイガル(Landmannalaugar, 標高599m)とソゥルスメルク(Þórsmörk, 同286m)を結ぶルートです。

途中のフラブティンヌスケル(Hrafntinnusker)でも、標高は1100m足らずなのですが、北緯64度の1000mです。

トレッキングルートの開放は7〜9月のみで、積雪状況によっては短縮されることもあるようです。

現地入りの1ヶ月ほど前からランドマンナロイガルの週間天気予報をチェックしていましたが、予報はきわめて頻繁に変わり、晴れマークを目にすることはほとんどありません。降水確率もだいたい60%以上、強風マークもよくみられました。

最低気温は1ケタ、最高は高くても2ケタ前半で、1ケタ台のときもしばしばあります。真夏の日本から訪れるにはなかなかハードなコンディションです。

ちなみに、首都レイキャビクのメインストリートにも同じ名前の通りがありますが、由来はこのトレッキングコースです。

 

ほんとうに「世界一美しい」トレッキングコースなのか?

世界中のトレッキングコースを歩いた人がいるわけではないだろうし、そもそも美しいというのは主観の問題なので、「世界一」というのは形容でしかありません。

要は、そう形容するにふさわしいかどうかということになりますが、そういう意味ではロイガヴェーグルは間違いなくイエスです。しかし、これまでの美しさの概念とは異質なものでした。

ロイガヴェーグルには富士山やマッターホルンのようにシンボリックな自然造形があるわけではありません。

ただ、視界を遮る木々はなく、360度全体で一つの立体的な景色が構成されています。そして、(支)尾根を横切るごとにその景色がダイナミックに変わるのです。空間の様相が時間によって変わる4次元的風景といえるかもしれません。

このため2次元の絵(写真)で切り出しても、ロイガヴェーグルの魅力を十分に伝えられないのが残念です。

 

また、4日間、同じコースを歩き、同じサイトで寝泊まりしていると、他のグループの面々と顔を合わせる機会も多くなり、自然と言葉を交わすようになります。とくに渡渉ポイントでは一蓮托生なのでカタコトながらも会話が弾みます。

 

さらに、ゴール地点で一緒になれば、ロイガヴェーグル走破という共通体験によってお互いの距離は一気に縮まります。これもロイガヴェーグル(長距離コース)ならではの魅力といえるでしょう。

初日から一緒だった女性4人組にゴールで会えなかったのことがとても心残りです。それぞれ個性が違う面々でしたが、隊長(とわたしたちが思いこんでいる人)はとても愛嬌があり、キュートなグループでした。

なお、漫然と満点の星空も期待していたのですがそれは叶わず。少し考えればわかることですが、白夜(日入23時半頃、日出3時半頃)ですから当然です。

 

どれほどの技術力や体力が必要か?

コースもよく整備されていて、アップダウンもさほどないので、テクニカルな難しさはありません。ただ、天候次第で簡単なトレイルも危険なトレイルに変貌してしまいます。

突然、ホワイトアウトに襲われたときのことを思い出すと冷や汗が流れますし、嵐のなかのテント泊はけっして気が休まるものではありません。

この直後、足跡もサインポストも何も見えなくなってしまいました

このためGPS地図やしっかりとしたテント設営など備えが重要ですし、寒さ対策も欠かせません。

また、一日あたり10〜15kmの行程ですが、15kgほどの荷物を担いで歩くには相応の体力も必要になります。

2人分の荷物

(ランドマンナロイガルからスタートすると)前半は雪渓の横断が頻繁にあるので、雪道に慣れていないと脚への負担も小さくありません。

わたしたちは25km位のトレイルランニングレースであれば、制限時間内に何とか完走できるレベルで、1週間ほど連日15km前後のワンディ・トレッキングを続けた経験が何度かあります。

今回もテントサイト到着後、周辺を散策できる余裕はあるだろうと思っていましたが、そこまでの体力は残っていませんでした。15kgほどの荷物を担いで歩くのは、体力を2割増しで消耗するような感覚です。

 

ロイガヴェーグルへの行き方

ランドマンナロイガルまたはソゥルスメルクへはレイキャビク市内からバスで向かうことになります。

どちらからもスタートできますが、基本的に下りとなるランドマンナロイガルを起点とする人が多いようです。

いずれへもバスで4時間くらいかかり、初日のスタートは昼過ぎになってしまうので、スタート地点で一泊するのもいいかもしれません。とくにランドマンナロイガル周辺は見所も多いようです。

 

トレッキングプラン

標準パターンどおりランドマンナロイガルを起点として3泊4日のプランで臨みました。

2日目からは靴を脱いで冷たい川を渡らなければならない渡渉ポイントがあります。

※ルートは文末のリンクを参照ください。

Day 1(7/11) ▲上り、▼下り

 12:30 ランドマンナロイガル(Landmannalaugar, 標高599m)発

  ↓ 10.8km ▲572m ▼76m

 16:45 フラブティンヌスケル(Hrafntinnusker, 同1067m)着

Day 2(7/12)

 08:50 フラブティンヌスケル(Hrafntinnusker)発

  ↓ 10.9km ▲83m ▼601m, 渡渉1回

 13:40 アルフタヴァトン(Álftavatn, 同548m)着

Day 3(7/13)

 07:45 アルフタヴァトン(Álftavatn)発

  ↓ 3.9km ▲102m ▼53m 渡渉1回

 09:10 ハヴァンギル(Hvanngil, 同598m)着・発

  ↓ 11.9km ▲158m ▼202m 渡渉1回

 13:10  エムストゥール(Emstrur, 同553m)着

Day 4(7/14) 

 08:35 エムストゥール(Emstrur)発

  ↓ 15.8km ▲215m ▼483m 渡渉1回

 13:45 ソゥルスメルク(Þórsmörk, 同286m)着

 

2日目はアルフタヴァトンではなく、4kmほど先のハヴァンギルまで行って宿泊することも可能ですが、個人的には湖畔にあるアルフタヴァトンがおススメ。ただ、アルフタヴァトンのテントサイトは吹きさらしなので強風時はつらいかもしれません。

アルフタヴァトンのテントサイト

各キャンプサイトには山小屋もありますが、そもそも定員が少なく予約が取りにくいこと、イビキがうるさいという噂、周囲にあまり気を遣いたくないことから、私たちは最初からテント泊とすることにしました。テントサイトは予約不要です。なお、いずれのサイトも利用料は2,500ISK/人泊(約2,500円)で、カード決済可(現金も可)です。

ただ、テントサイトにもキャパシティがあり、場所の良し悪し、たとえば、風避けの石垣の有無、水場やトイレからの距離などもあるので、出来るだけ早目めに(だいたい16時頃までに)確保するのがよいでしょう。

この後、強い雨と風に

また、途中、腰を落ち着けて昼食をとるような場所はないので、次のキャンプサイトまで一気に歩き、テントサイトの場所を確保した後、遅めの昼食をとりました。

フラブティンヌスケル以外にはシャワー(有料)もありますが、あの寒さの中ではとても浴びる気になりません。

なお、テント泊でも水道・トイレは使えます。しかし、キッチンというか囲い付きの食事スペースは山小屋宿泊者のみが利用できるようです。

 

トレッキングの装備

ロイガヴェーグルの開放期間は夏なので、ほぼ白夜とはいえ、最低気温が零度を下回ることも珍しくありません。装備の主眼は防寒対策となり、私たちの場合は次のような準備しました。

まず、テントですが、軽さを(もちろん耐久性も)重視して「カミナドーム2」(finetrack社)を新規購入。組み立てやすく、大雨・強風でもまったく問題ありませんでした。なお、強風時には念のためペグを追加で4本(計12本)打ちました。

シュラフは、ダウンシュラフの「オーロラライト 600DX」(NANGA社)で、使用快適温度マイナス4度、下限温度マイナス11度のもの。外気温が2度くらいのときも薄着で快適に眠ることができました。シュラフマットも必須で、できればエアー式のものがいいでしょう。

服装は、「マウンテンジャケット」(THE NORTHFACE社)、フリースのミドルレイヤー2枚(厚手・薄手)、パンツは通常のトレッキングパンツ+レインパンツ、下着はメリノウールのTシャツ・長袖シャツ・長パンツ・ボクサーパンツ・靴下を用意。

結果、トレッキング時、上半身はマウンテンジャケット+ミドルレイヤー(薄手)+Tシャツ+長袖シャツ、下半身はトレッキングパンツ+ボクサーパンツ+靴下で事足りました。

就寝時はマウンテンジャケットと靴下は脱ぎ、トレッキングパンツはメリノウールの長パンツに履き替えれば十分でした。

それにしてもメリノウールはかなりの優れモノです。丸2日間、着用してもまったくイヤな臭いがしません。

なお、渡渉のときは短パンまたは水着になることが必要な場合もありますし、サンダルも必須です。女性でもパンイチ・素足で渡る強者もいましたが。

ここは裾をまくり上げるだけでOKでした

万一のため、エマージェンシーシートや強力カイロ(マグマ)も用意しましたが、幸い使わずに済みました。

このほか、携帯型浄水器「BeFree」(KATADYN社)があると便利です。途中の川で汲んだ水を飲めば、重い水を持たずに済みます。

ガスカートリッジは持ち込みできないため現地調達となりますが、日本で主流のバーナーに合わないカートリッジがあるので、調達に際しては注意が必要です。

また、トレッキングポールもあった方がいいでしょう。わたし自身は持たずに行ったのですが、ほとんどの人が持っていました。とくに渡渉のときに頼りになります。

 

ロイガヴェーグルを訪れる前にしておくべきこと

アイスランドにはロイガヴェーグルの他にも見所がたくさんあります。

レイキャビクからも様々なツアーが催行されていて、わたしたちもゴールデンサークル(ゲイシール、グトルフォス、シンクべトリル国立公園)に半日ツアーで訪れました。

しかし、こうしたツアーに参加するのであれば、ロイガヴェーグル前に行く方がいいかもしれません。

ロイガヴェーグルの後は、どうしてもロイガヴェーグル・ロスに陥ってしまい、テンションが下がってしまいます。また、ロイガヴェーグルとの比較で見てしまうので、どうしてもスケールが小さいように感じ、感動が薄れてしまいかねません。

ゲイシール、圧巻なのですが。。。

グトルフォス(黄金の滝)、迫力はあるのですが。。。

シンクべトリル、ユーラシアプレートと北アメリカプレートの引っ張り合いで生まれる割れ目(ギャヴ)、これも感動ものなのですが。。。

わたしたちはアイスランドに8日間滞在して、天気予報を見ながらコンディションの良さそうな4日間をロイガヴェーグルに当てるつもりでした。しかし、上述のとおり予報がよく変わること、出国前にPCR検査を受けて結果を待たなければならなかったことから、日本出発の10日ほど前に予定を決めてしまい、ランドマンナロイガルまでのバスも予約してしまいました。

帰国してから知ったのですが、わたしたちが歩き終えた翌日(7/15)、まったく同じコースでロイガヴェーグル・ウルトラマラソンが開催されたようです。結果をみると、チャンピオンは4時間4分53秒、信じられません!

 

トレッキングの詳細は↓

ロイガヴェーグル_トレッキング(前半)

ロイガヴェーグル_トレッキング(後半)

 

トレッキングルート

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