Zermatt → Trift
バーンホフ通り(Bahnhof St.)から少し入ると古い民家が立ち並んでいます。
登山口までかなりの急坂が続きます。途中にあるホテルのベランダから女性に「ハロー!」と声をかけられたので「ハロー!」と返すと、怒涛のように中国語が返ってきたので Sorry して先を急ぎます。
少し道に迷いましたが、バーンホフ通りから15分ほどで登山口に到着します。サインポストには、Trift まで1時間50分とあります。
このあたりで生後数か月と思しき子どもを抱っこひもでかかえながら、早足で下りてくる女性とすれ違いまいた。逞しい限りです。
牧草地のなかを少し歩くと、すぐにガレ場。
岩壁の横を歩いたり、頭上に大きな岩があったり、落石を気にし出すとキリがないのですが、落石で亡くなった人の写真やネームプレートをみるとやはり怖ろしくなります。
ここの岩は層が薄くてとても脆そう。屋根などの建材としては加工しやすいのかもしれませんが、落石は頻繁にあるはずです。
Edelweisshütte からはひたすら谷間を歩くことになります。トレイルの脇を流れる川からは大量のマイナスイオンが発生しているのか、清々しくとてもいい気持ちです。
まるで山奥に住む仙人でも訪ねるような感じの道が続きます。低く垂れこめた雲がその雰囲気をさらに高めてくれます。
振り返ると森林限界も超えてきたようです。
地質、土の色も次々と変わり、岩質も違います。古来、地球とともにどのような歴史を重ねてきたのかと思うと時間の雄大さを感じざるにはいられません
登山口から1時間半ほどでTrift(2337m)に到着です。ヒュッテもありますが、何も飲み食しないのに入るわけにもいかず、立ったままバナナを頬ばってリスタート。
これから向かう方から下りてくる人がみえました。朝早くに登ってきたのでしょう。
Trift を発つと急な上りとなり、ヒュッテがすぐに小さくなりました。
ここでトレイルランナーとすれ違いましたが、この寒さにも関わらず半袖・短パンで汗だく。2000mを超える標高のなかで日常的にトレーニングをしている欧州勢がトレイルランレースで強いことにもうなずけます。
Trift から一気に300mほどを上るとなだらかな草原になります。
ガスのなかに羊の群れ。昨年のチロル(オーストリア)では頻繁に羊や牛をみかけましたが、ツェルマットではそれほど多くみかけません。
Trift から1時間ほどで Höhbalmenstafel(2665m)に到着です。特段、山の頂上というわけでもないのですが、これがトレッキングというものかと。
厚い雲に覆われマッターホルンもモンテ・ローザも氷河も何も見えません。
↓ は Hüenerchnubel(2808m)、地図をみても頂上への道はなさそうです。しかし、高原を歩いていけば登れそう。
ベンチや大きな石があるのですが、どこも濡れていて座ることができず、立ちながらバナナと虎屋の羊羹でランチをとりました。じっとしているとすぐに寒くなってきます。
ランチの後は、別のルートでツェルマットに戻ります。トレイルと思われるところは雪に覆われていて、足跡を頼りに歩かなければいけません。
雪上の黒い粒は羊のウンチ? なんでわざわざ目立つ雪の上に残すのだろうと思いながら、滑る足元とウンチを気にしながら下山開始です。
雪渓の上を恐る恐る歩き出すと、トレイルがみえてきました。
写真を撮っている間に妻もだいぶ先に行ったし、ガスがかかって視界も悪いので、岩陰でちょっと失礼して用足し。身体が冷えて我慢の限界でした。
すると、温水に驚いた蜘蛛や小さな虫が岩間からわき出してきて、こっちがビックリしてしまいます。
この斜面にはいろいろな花々が咲き乱れています。ガスで周囲がみえないので余計に花に目がいきます。
小さい花ばかりで構図上のインパクトはないのですが、飛び抜けて目立つ花もなく、それが全体として平和的な調和を醸し出しているように感じます。理想的な社会というのもこういうものかも知れないと仙人ような気分になります。
ガスの間からツェルマットの町並みや近くの山々が望めるようになってきました。午後になって天候は回復気味、予報が見事に当たったようです。
標高2000mくらいまで下りてくるとかなり明るくなってきました。
ツエルマットの町もずいぶん近づいてきます。
ガスのなかを歩いていたのでわからなかったのですが、振り返るとなかなかの岩場を通ってきたようです。しかし、トレイルはとてもよく整備されているので視界が効かなくとも迷うことはありません。
麓にはツェルマットの伝統的なネズミ返しつき建物群がありました。教会にもネズミ返しがついています。基礎石の上に柱が立てられ、さらにその上に平べったい石が置かれていて、家屋が宙に浮いている感じです。
集落に入ると、そこかしこにモーマット。何匹ものモーマットがじゃれ合いながら斜面を転げ落ちて遊ぶ、とても微笑ましい光景です。
町を見下ろす斜面に立つ十字架。とても目立つ位置にあるので、何か訳ありのシンボリックなものなのでしょう。
ツェルマットの町に戻り、本日のトレッキングは終了です。
あっという間にツェルマットの3日目が終わってしまいました。明日はいよいよマッターホルンの登山口を目指します。